意識障害の治療研究会として発足、日本意識障害学会。

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くも膜下出血後遷延性意識障害の患者の目玉が、白目の時は頭の中で何が起きているのですか?

2014年 9月 28日

Question

くも膜下出血後遷延性意識障害となり、1年9ヶ月経過した65歳の主人のことについて質問します。最近昼間、白目の状態がよくみられます。呼びかけに対しては頷きなどの反応はあるのですが、いつもより覚醒度が低いと感じます。目は半眼で、白目(黒目が上を向いている)です。目玉は動いていません。白目の時は頭の中で何が起きているのですか。痙攣が起きている状態なのでしょうか。また、このような症状について説明されている文献はありますか。

Answer

このご質問に対する回答をご理解いただくためには、まず、「てんかん」について、一般的なことをご理解いただく必要があると思います。

「てんかん」の定義は、『種種の病因によってもたらされる、大脳の神経細胞の異常で過剰な活動に由来する反復性の症状の出現(てんかん発作)を起こす状態』とされています。

ご主人の場合もくも膜下出血やその後の髄膜炎による脳障害がありますから、これにより「てんかん発作」が繰り返しておこる可能性はあります。

脳はその部位により、例えば運動を司ったり、視覚を担当したり、記憶を担当したりする部位が分かれています。従って、過剰な活動が脳のどの部分の神経細胞に起こるかで「てんかん発作」の症状は変わってきます。一般に「痙攣」と言われているものは神経細胞の過剰な活動が運動を司る部分に起こった場合で、一般にはこれが最も多いので、「てんかん発作」=「痙攣」と理解される場合がしばしばあります。質問者の方も、あるいはこのように理解され、痙攣という表現をされたかも知れません。以上の説明からおわかりいただけると思いますが、てんかんの症状は痙攣だけではなく、視覚を担当する部分に過剰な活動が起こると、突然閃光が見えたように感じたりする視覚発作が起こったり、記憶に関係した部分に過剰な活動が起こると、普段知っている情景を突然新鮮に感じたりする「未視感」が起こったりします。つまり、てんかん発作は脳のどの部分の活動が異常で過剰になるかで、その症状は異なってきます。てんかんのもう一つの性質として、脳の一部分に起こった異常で過剰な活動が(最初に異常な活動が起こる部分を「てんかんの焦点」といいます)、ちょうど地震が震源地から周囲に広がって行くように、周囲の神経細胞を巻き込んで、それにより症状が拡大していく場合があります。比較的多いのは、運動を司る脳の一部から発作が始まり、これはその部分が支配する対側の手足の痙攣となりますが、この過剰な興奮が脳幹部に及ぶと、ここは意識の中枢ですから、意識がなくなり、さらに反対側の大脳の運動領に及ぶと全身痙攣になります、場合によっては痙攣中は呼吸が停止します。これが一般の人が「意識を失って、倒れ、全身が痙攣する」てんかんのイメ-ジだと思います。

大脳には眼球の運動を司る部分があり、この部分は脳幹部を経由して両側の眼球の運動をコントロ-ルしていますから、もしこの部分がてんかんの焦点であれば、異常な眼球の位置(上転)がこれを原因として起こっている可能性があります。てんかんの症状として眼球の位置の異常が起こる場合には、異常なった位置を中心として眼球にぴくぴくした動きが見られることもしばしばあるので、そのような動きがあれば、てんかんの症状である可能性が高くなります。また、前述したように、てんかん焦点が、周囲を巻き込めば、あるいは、別の部分にてんかんの焦点があり、その興奮が、眼球運動を司る部分に及べば、その症状が出るので、眼位の異常が起こった場合、これと同時に痙攣(手足がぴくぴくしたり、手足の一部が異常に緊張する)やその他の症状が伴うなら、この眼位異常がてんかんの症状の一部である可能性は高くなります。

次に、ご主人に見られる眼球の上転がてんかんでない可能性について考えて見ます。

第一に「ベルの現象」があります。これは正常な反応で、覚醒時に目を閉じると眼球が上転する現象です。試しに誰かに目を閉じてもらい、その状態で瞼を持ち上げて見てください。眼球が上転して白目が見えるはずです。ベルの現象が見られるのは覚醒している場合だけで、もし深く眠っている人の瞼をそっと持ち上げると眼球は正面を向いているはずです。ご主人の場合、覚醒している状態で目を閉じたくなる状態はないでしょうか。例えば、涙の分泌が少なく、眼球が乾燥して目がひりひりしたり、結膜炎で白目が充血したりしていませんか?もっともこの場合は意識的に閉眼するので白目が見えることはなく、意識的に閉眼しても十分に閉瞼できない状態(例えば顔面神経麻痺など)が同時にあることが前提です。もし、深く眠っている場合に眼瞼が完全に閉じていれば顔面神経麻痺はないと考えて良いと思います。その他の可能性としては、眠った際の閉瞼が不十分な場合(これは健常人でも時々見られます)閉眼しきれなかった瞼の隙間から白目が見える場合です。しかし、この場合には眼球はほとんど上転していません。

このほかは、まれに、脳幹部自体の障害によりここにある眼球運動に関係する部分が影響を受け、その部分の状態の変化(睡眠覚醒状態など)により、健常人にはみられない異常な眼球運動が出現する場合などが考えられます。

ご主人の眼球の上転については、以上のような可能性が考えられますが、もし、この眼球上転が見られるときにいつもコミュニケ-ションがとりにくくなる状態が伴っていれば、てんかん発作の部分症状である可能性は高いと思われます。

てんかん発作が起こっている場合はご本人はその症状を自分の意志でコントロ-ルすることはできません。てんかん発作が意識消失を伴う場合にはご本人は発作中の記憶はありませんから、発作が終わって意識が戻った状態(直後は完全覚醒ではなくボ-とした状態です)では眠りから覚めた様に感じます。発作中に強い痙攣があった場合には覚醒後に筋肉痛などを自覚する場合があります。意識障害を伴わない場合は身体に起こった症状は自覚し、記憶しています。また、周囲から見て発作を起こしていることが判る前に脳内に起こった感覚の異常などの外からみて判らない症状(発作の前兆)を自覚している場合もあります。

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